名古屋正教会

Nagoya Orthodox Church

初召使徒聖アンドレイ

 聖アンドレイは、十二使徒の中でいちばん最初にハリストスの弟子に召されたことから「初召使徒」と呼ばれている。
 ガリラヤのカペルナウムという町で、その兄弟シモン・ペトルと共に漁師をしていたアンドレイは、前駆イオアンの弟子となり、救い主の到来を待っていた。ある日、前駆イオアンは、イイススを指して「見よ、神の小羊」と証(あかし)した。それを聞いていたアンドレイは、イイススのもとに走り寄り、この人こそ救世主(メシア)であると確信した。そうして彼は、その兄弟ペトルをイイススのもとへ導いた(イオアン伝1・35―42)。その後、アンドレイとペトルが漁をしているところへイイススが来て「私について来なさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」と言われた。そこで彼らは、全てを捨ててイイススに従ったのである(マトフェイ伝4・18―22)

 こうして最初の弟子となったアンドレイは、やがて十二使徒の中に選ばれ、主の奇蹟、死、復活の証者となった。
 アンドレイの名は、福音書の中にしばしば見いだされる。たとえば、世の終わりの前兆について、イイススにひそかに尋ねた四人の弟子の一人にアンドレイがいた(マルコ伝13・3)。また、五千人の空腹を満たした奇蹟の時のパン五つと魚二ひきは、アンドレイを通して調達された(イオアン伝6・8)。さらに、アンドレイは或るギリシャ人の、イイススに会いたいという願いを仲介したが、その時、重大な出来事があった。主イイススが「人の子が栄光を受ける時が来た」と言って神父(かみちち)に祈りを献げた後「私はすでに栄光をあらわした。そして、更にそれをあらわすであろう」という天の声が鳴り響いたのである。
 さて、主の昇天、聖神降臨の後、アンドレイは十二使徒の一人として伝道を始めた。彼はギリシャから小アジア、黒海沿岸にわたって伝道活動を行い、聖使徒イオアンといっしょにエフェスを訪れたり、聖使徒マトフェイと共に迫害を受けたりした。また、年代史家ネストルによると、アンドレイは、ドニエプル河をさかのぼり、遠くキエフの都まで行って教会をたてたとされている。こうしてアンドレイは、数々の奇蹟や説教、その善行などによって、多くの人びとをハリストスの教えに導き、各地に教会をたてていった。

 アンドレイは晩年、ギリシャのアカイヤ地方の都市パトラに住んだが、そこで彼は、十字架刑によって致命することになる。
このアカイヤ地方でも、アンドレイは多くの人びとを改宗させた。それらの中には総督エゲアトの妻や、その兄弟ストラクトレイもいた。当時のローマ皇帝・ネロはキリスト教を迫害していたが、総督エゲアトも家族や市民がキリスト教の信者になったことを大いに怒り、偶像崇拝を人びとに強制しはじめた。その時、アンドレイは総督の前に泰然と立ち、キリスト教を弁護したのである。
 「あなたは裁判官ではあるが、あなたの上に至聖なる審判者・神のいますことを知るべきである。」
 総督は、「そんな愚かな偽教を説いたために、おまえらのイイススという男は十字架にかけられたのではないか」と言った。
 アンドレイは、「主が十字架に釘うたれたのは悪行のためではなく、人に強迫されたからでもない。私たちの救いのために、自ら甘んじて十字架にのぼられたのだ」と答えた。
 総督は反問して言った。
 「どうしてそんな事が言えるのか。あの男はユダヤ人に捕えられ、大罪人の受けるローマ人が最も嫌う十字架の刑に処せられたのではないか。」
 これに対して、アンドレイはイイスス・ハリストスと共に生活した体験をもって、主の十字架の奥義を説きはじめた。しかし、エゲアトの心の耳はふさがれたままで、アンドレイはとうとう投獄されてしまった。

 アンドレイを敬愛する人びとは自ら牢獄へおもむき、アンドレイと共に祈祷し、教訓を聞いた。ところがついにその人びとの中から、総督を暗殺してアンドレイを救出しようという叫び声があがった。しかし、アンドレイはそれを制して言った。
 「我等の主イイスス・ハリストスの平安を、悪魔のために損ってしまうことのないようにしなさい。忍耐をもって苦難を受け入れることこそ、ハリストスの兵士と言えるのです。片時の限りある苦難は恐れるに足りません。永遠の限りなき苦難こそが最も恐るべきものなのです。」

 翌日、総督はアンドレイを十字架にかけるように命じた。ところが、アンドレイは自分のために準備された十字架を讃揚し、主と同じ形で神に召されることを喜んだ。そうしてついに、アンドレイは十字架にはりつけにされてしまった。それでも群衆はアンドレイの十字架の下に集まり、この聖人の二日にも渡る最後の教えに耳を傾けた。しかし、人びとの総督に対する怒りはますます高じ、とうとうエゲアトを捕えて、アンドレイを赦すように強迫した。仕方なくエゲアトは、アンドレイを十字架から降ろさせようとした。ところがアンドレイはそれを拒んだのである。
 「主よ、十字架から降りることを許さないで下さい。どうか、この至聖なる十字架の上より、あなたの永遠なる平安の所に入らせて下さい」。
 アンドレイのこの祈りは速かに聞き入れられた。突然、天から光が差し込み、アンドレイの体を輝かせ、その光と共にアンドレイの霊は、天の神のもとへとゆだねられたのである。このアンドレイの致命は、紀元後七十年のこととされている。

 なお、この十字架の形がX字型であったという伝承があり、X字型の十字架を「アンドレイの十字架」と呼ぶことがある。