名古屋正教会

Nagoya Orthodox Church

聖人伝 聖致命者(殉教者)アカキイ


 マクシミリアンがローマの皇帝になると、彼は直ちに「ハリスティアニン」を迫害するように命令を下しました。それに先立って自分の部下を調べたところ、自ら「幼い頃からハリストスの僕となり、今なおそのみ教えに生きている」とその信仰を表した者がありました。そこで、そのハリスティアニンの上司はあらゆる手段を尽くして彼をみ教えから背かせようとしましたが、彼はそれらの苦難に悉く耐え忍んだので、彼を縛って将軍(ワイワレイン)のもとに護送しました。このハリスティアニンの名はアカキイといいました。将軍はアカキイに、
 「もしお前が諸神によって我々に君臨している皇帝の命令に従わないで、諸神を拝さないのならば、私はお前を苦しめるだろう……。だから、これからは法によって罰せられて十字架に釘打たれた、ハリストスと称する者を拝するのはやめろ!」 と諭しました。
 ところが、アカキイは冷静に、
 「あなたは邪神に惑わされ、主のみ旨によって君臨している皇帝をして邪神によるものとしているとは……。その罪はとても大きい……。あなたが『人』と思っているイイスス・ハリストスは、神の子なのです。主は私たちを救うために地に降りて人となられ、十字架上の死をもって私たちの罪の贖いをして下さったのです……。けれども、あなたがた異教の徒はこの『真理』を悟ることが出来ない……。」 と言いました。
 これを聞いて将軍は、
 「ならば、お前の信じている神は”全能者”であるのに、どうしてこれに背いている多くの皇帝たちを罰しないのだ?」 と訊ねました。
 アカキイはそれに答えて、
 「あなたがた異教徒がそしる神は本当に力があり、なおかつ慈しみ深いのです。私たちの神は、あなたがたの心が開かれるのをじっと待っておられるのです。」 と言いました。
 将軍はアカキイがあまりにも鋭敏なので、とても驚きました。そして、
 「お前は何を学んだのだ?」 と訊ねました。
 アカキイは、
 「私は何も学んだことはございません。ただ、祈祷書を読むだけです。けれども、神は最初からその御言葉を宣べ伝えるために、著名な人や裕福な人、学者、博士、哲学者などのようは人をお選びにならず、ごく普通の人やむしろ無学で貧しい猟師などを選ばれ、その英知とお力をもって弱者に『真理』をお顕わしになったのです!」 と答えました。
 それを聞いた将軍はしばらく黙ったまま、じっと何かを考えていました。そして、静かな口調で、
 「……あまりいたずらに多くのことを言うものではない。お前はただ私に、皇帝の命令に従って諸神に献祭するか否かを告げなさい。」 と言いました。
 するとアカキイはすぐさま、
 「今、申し上げた通りです!……それではもう一度言いましょう。私はハリストスの僕です!どうして偶像に祭を献ずることができましょうか!」 と言いました。
 将軍は、
 「お前はまだ25歳にも満たないではないか……。私はお前を苦しめたくないのだ……。お前がもし諸神を拝さないのならば、やむを得ずお前を苦しめるだろう……。」 と言いました。
 アカキイはそれでもなお堅く真理を守り、将軍の言葉に耳を貸さなかったので、将軍はついに彼を鞭打つように命じながら、
 「お前の信じる神が来てお前を助けるかどうか、とくと見物させてもらおう!」 と言いました。
 鞭は容赦なく彼のからだを捉え、その肉を破って血を四方に吹き出させました。けれどもアカキイは必死に耐え忍びながら、
 「主ハリストスよ、あなたの卑しい僕をお守り下さい。」 と祈りました。
 将軍はアカキイが血まみれになるのを見て、
 「まだ諸神を拝す気にならないか?」 と訊ねました。
 するとアカキイは、
 「いや、主はその慈しみをもって私の心を固めてくださったので、今、少しも疑うことなく私の神に依頼して諸々の苦難を受けることを願います……。」 と答えました。
 将軍はそれを聞くや激しく怒り、アカキイの苦しみを増やしてゆきました。が、しかし、アカキイは必死に耐え忍び、その信仰を貫き通したので、将軍は彼を獄舎に繋いでおくように命じました。
 一週間後、将軍派囚人を裁くためにエザンティアに護送しました。アカキイもまた、他の囚人たちとともに護送されましたが、全身ひどい傷に被われ、しかもその道はとても険しく、また食べ物もろくに与えられなかったので、彼はすぐに疲れ果ててしまいました。そしてとうとう動けなくなってしまったので、彼は主に祈りました。
 「……主憐れめよ。」
 すると、突然天から、
 「頑張りなさい、アカキイ。」 という声が聞こえてきました。
 これを聞いて、他の囚人たちは皆アカキイの足元に突っ伏して、彼に神のみ教えを説いて下さるようにお願いしました。彼はそれに答えて神のみ教えを皆に説きました。その中に数人、ハリスティアニンがいましたが、彼らは夜になると眩しいばかりに光り輝きました。そうです。彼らはアカキイを守るために遣わされた、神の使いだったのです。そして。アカキイは他の囚人たちとともにエサンティアに着きました。
 翌日、将軍はアカキイを独房に連れてゆき、彼を鎖で繋ぎました。そして数日間、食べ物を与えず、兵卒にこれを見張らせました。ところが夜になると突然、アカキイの繋がっている独房から光がもれたので、兵卒がその中を見ると、例の神の使いたちがアカキイの傷を癒したり食べ物を与えたりしていました。兵卒はあわてて独房の鍵を開け、その中に入りました。すると、その中にはアカキイ一人がいるだけで、他に誰も見当たりませんでした。
 一週間後、アカキイは再び将軍の前に呼ばれました。将軍は彼のからだが健康そのものであることを見て、兵卒にいろいろ問いただしました。そして兵卒から神の使いのことを聞きましたが、将軍は依然として神の全能を悟らず、さらに残虐な拷問をアカキイに加えました。けれども、あらゆる手段を尽くしてもアカキイには通用しなかったので、彼をフラキアにいる太守のもとに送りました。
 アカキイがフラキアに着くと、太守は彼を獄舎に繋いで将軍からの書状を読みました。そして、彼をハリストスのみ教えに背かせることが不可能であることを悟り、彼を死刑に処することを決めました。
 かくてアカキイは荒野に設けられた刑場に連れてゆかれました。処刑の前に彼は跪き、大声で主を賛揚し、祈祷をしました。そしてお祈りが終わるとついに首をはねられてしまいました。
 彼の死後、ハリスティアニンが大勢集まり、その遺体を手厚く葬ったということです。